オオカミ兄弟〜二番目の兄〜



一番上の兄が死んでしまったので、末のオオカミは二番目の兄を訪ねました。
末のオオカミは、一番上のオオカミに起こったことをひとつ残らず話しました。

「兄さんもバカな事をしたもんだ!」

二番目のオオカミは腹を抱えて笑いました。


次の日、末のオオカミは二番目のオオカミの狩りについていきました。

「二番目の兄さん、何を獲物にするんですか?」
「なんだ、末の弟。落ちこぼれのお前にはできるまい。俺の獲物は子豚だよ。」
「子豚?子豚はすばしっこくて小さくて、捕まえるのが難しいですよ?」
「末の弟、だからお前はだめなんだ。俺は子豚よりもすばやくて、体も大きい。ほうら、あそこに獲物がいるぞ。騙して誘って、ガブリと頭から一飲みだ」

やがて二番目のオオカミは、丘の上に藁で作られた家があるのを見つけました。

「におう、におうぞ。子豚のにおいだ」

舌をペロリと出しながら、二番目のおかみは藁の家に向かって歩き出しました。
末のオオカミは兄の狩りを少し後ろから見ています。
家の中にいた子豚は、外からオオカミが迫ってくるのを見つけて慌てドアにかんぬきを掛けました。
きっと、末のオオカミならどうすることもできずにあきらめた事でしょう。
しかし二番目のオオカミは、家の前にたって息を胸いっぱいに吸い込んで、ブォオオオオオオオッ!!!と一気に吐き出しました。
まるで嵐のようなオオカミの息は、柔らかく編まれた藁の家を見る影もなく吹き飛ばしてしまいました。

「うわぁああああオオカミだぁぁあぁあぁぁ!!」

隠れる場所を失くした子豚は、一目散に逃げ出してしまいました。
二番目のオオカミはすぐにそれを追いかけて、末のオオカミも必死についていきます。
すると子豚は、少し離れた原っぱにある、木の家に逃げ込みました。
中には別の子豚もいました。

「ああ兄さん、さすがに木の家では吹き飛ばせないでしょう?」
「バカ言え弟。木の家だってなんだって、俺なら吹き飛ばせるんだぜ。見ろよ。今度は子豚が二匹だ。」

そういって先ほどと同じように、二番目のオオカミは木の家に向かって思いきり息を吹きました。

メキメキ…バリバリッ!

二番目のオオカミが宣言した通り、木の家もすっかり粉々に吹き飛んでしまいました。
すると中の子豚たちは、オオカミをとても怖がって、一目散に逃げて行きました。
二番目のオオカミと末のオオカミも後を追いました。

やがて二匹の子豚は、森の入り口に建つ煉瓦の家に逃げ込みました。
中には別の子豚もいました。

「ああ兄さん、さすがに煉瓦の家では吹き飛ばせないでしょう?」
「バカ言え弟。煉瓦の家だってなんだって、俺なら吹き飛ばせるんだぜ。見ろよ。今度は子豚が三匹だ。」

これはしめた、ごちそうだ!と二番目のオオカミは喜んで、煉瓦の家にブォォォオオオオ!!!と息を吹きかけました。
しかし重たい煉瓦の家は、ピクリとも動きません。

ブォォォオオオオ!!!
ブォォォオオオオ!!!

何度も何度も試してみても、やはり煉瓦の家を吹き飛ばすことはできませんでした。

「ほうら兄さん、ダメでしょう?諦めて他の獲物を探したらどうですか。」
「バカなことを言うな。三匹の子豚なんてごちそう、諦められるわけがないだろう。俺は頭もいいんだ。他の方法があるはずだ。」

中では三匹の子豚が安心した表情を浮かべて此方の様子を伺っていました。
その家の周りを、二番目のオオカミはしばらくぐるぐるとまわっていましたが、やがて屋根に煙突がある事に気が付きまいした。

「しめた!煙突があるぞ。そこから中に入って、子豚を三匹一飲みにしてやろう」

二番目のオオカミは屋根に上り、煙の出ている煙突によじ登りました。
煙に少しせき込みながらも、中へと入っていきます。
兄が煙突に入ったのを見届けた末のオオカミは、子豚に見つからないように家の窓から中をのぞきました。
しかしその時、バシャーーン!と水が跳ねる音と、「熱い熱い!助けてくれ!」と叫ぶ兄の叫び声が聞こえたのです。
煙突を滑り降りた二番目のオオカミは、そのまま暖炉で火にかけられていた鍋の中に落ちてしまったのでした。
そして子豚たちは、恐ろしいオオカミが出てこられないよう鍋に蓋をして、兄弟全員の無事を踊って祝いました。
末のオオカミはまた独りぼっちになってしまいました。






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