オオカミ兄弟〜一番上の兄


ある森に、4匹のオオカミの兄弟が暮らしていました。
3匹の兄オオカミは大きくたくましく成長していましたが、末のオオカミは体小さく痩せていました。

やがて、それぞれ独り立ちの時が来ました。
兄たちは立派に成長し、狩りも上手出来るので喜んで森へ行きました。
ところが一番末のオオカミは痩せたままで狩りもできないので、一番上の兄についていくことにしました。

「一番上の兄さん、何を獲物にするんですか?」
「なんだ、末の弟。落ちこぼれのお前にはできるまい。俺の獲物は人間だ。」
「人間?人間は賢くて力強くて、とても恐ろしい生き物ですよ。」
「末の弟、だからお前はだめなんだ。俺は人間よりも賢くて、力も強い。ほうら、あそこに獲物がいるぞ。騙して誘って、ガブリと頭から一飲みだ」

一番上のオオカミは、自信満々に獲物に向かって歩き出しました。
その先には、足元の草花に見とれる赤い頭巾の女の子がいます。
一番上のオオカミは、甘くて優しい声で女の子に話しかけました。

「やぁ、赤ずきんのお嬢さん。これからどこへ行くんだい?」
「おばあちゃんのところよ。病気で寝込んでいるから、葡萄酒とパンを届けるの。」
「おばあさんの家はどこだい?」
「この森をもう少し行って、川を渡った先にあるのよ。」
「なぁんだ。もう随分近くじゃないか。それじゃあこの一面に咲くきれいなお花を摘んで行っておやりよ。君はなりふり構わず早足で、せっかくの景色も見てないじゃないか」

オオカミに言われた女の子は、きれいな花畑に向かってふらふらと歩きだしました。
その隙に一番上のオオカミは末のオオカミを連れて、女の子から聞き出した家に向かって歩き出しました。
おばあさんのおうちについて、一番上のオオカミは女の子の声のまねをすると、中から『よく来たね、お入り』と優しい声が聞こえてきました。
末のオオカミはすぐに家の裏に回って、窓から中をのぞいてみます。
すると一番上の兄オオカミがおばあさんを丸呑みにして、ベッドの中へもぐりこんでいました。
やがて赤ずきんの女の子がやってくると、一番上のオオカミは今度はおばあさんの声真似をして『お入り』と誘い込みました。
女の子がベッドのそばまで来ると、不思議そうにおばあさんに訊ねました。

「まぁおばあさん。なんて大きな腕をしているの?」
「お前をよく抱きしめられるようにだよ。」
「まぁおばあさん。なんて大きな目をしているの?」
「お前の可愛い顔をよく見る為だよ」
「まぁおばあさん。なんて大きな耳をしているの?」
「お前の可愛い声をよく聞く為だよ」
「まぁおばあさん。なんて大きな口をしているの?」
「それは、お前を食べてしまうためさ!!」

そう叫ぶと、一番上のオオカミはベッドから飛び出して、赤ずきんの女の子が悲鳴を上げるよりも早く一飲みにしてしまいました。
末のオオカミも窓の外で驚いて、しりもちをついて転びました。
ところがそれから、待てど暮らせど、一番上のオオカミが家から出て来ることはありません。
御馳走を二人も食べたオオカミは、すっかりおお腹がいっぱいになり、そのままベッドでものすごいいびきを立てて眠ってしまったのですから。
末のオオカミは一番上のオオカミを起こそうと、家に入ろうとしました。
けれどそこへ恐ろしい狩人が現れたので、驚いた末のオオカミは慌てて家の裏側に隠れました。

「おや、おや。おばあさんのいびきにしてはずいぶん大きいな。」

不思議に思った狩人は、おばあさんの家に入っていきます。
そして、バーン!と鉄砲を打つ音がして、「この悪いオオカミめ!」という狩人の叫び声が聞こえてきました。
びっくりした末のオオカミが中をのぞいてみると、一番上のオオカミは狩人に打たれて死んでたのです。
そしておなかの中から、おばあさんと赤ずきんの女の子が助け出されたのでした。



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