オオカミ兄弟〜末の弟〜
末のオオカミは、もう木の実ではしのげないほどお腹が空いて仕方ありませんでした。
大きな獲物を食べないと、自分まで死んでしまいます。
しかし、これまで失敗してきた兄達のようなことにもなりたくありませんでした。
せめて森から街へ出れば、少しはましな食べ物があるかもしれない…。
末のオオカミは思いました。
深い森を抜けて街へと行く途中で、一人の少年に出くわしました。
末オオカミはびっくりして森へ逃げこみましたが、少年も大きな声で
「オオカミだーーー!!オオカミが出たーー!!!」
と叫びながら街へ走って行きました。
その様子を見た末のオオカミは、こんなにやせ細って小さな自分を怖がるなんて…?と少し嬉しくなりました。
そして次の日も、また次の日も、末のオオカミは少年が自分を怖がってくれるか試したくて、街へ続く道を何度も通いました。
そして少年はそのたびに、「オオカミが出た!!」と悲鳴を上げて逃げ帰るものですから、末のオオカミはおかしくてたまりません。
「こんな僕を怖がるんだ。あの子はさぞ臆病な子に違いない。ようし、明日あの子を食べてみよう…」
末のオオカミは満月の夜にそう思いながら眠りにつきました。
次の日、いつものように末のオオカミが街への道を進んでいくと、やはりあの少年がいました。
此方を見ていつものように「オオカミが出た!」と叫び始めます。
いつもなら末のオオカミも驚いたりして森へ帰るのですが、今日は違いました。
大声で叫ぶ少年の元へ、全力で走ります。
するとそれに驚いた少年は、先程とはぜんぜん違う大きな声で「オオカミだ!オオカミに襲われる!助けて!!」と泣き叫び始めました。
ところが街からは誰ひとり助けに来てくれる人はおらず、それどころか「もうその手には乗らないぞ!」という声が聞こえてきました。
少年はますます涙を流して叫びます。
「本当だよぅ!!本当にオオカミに襲われてるんだ!!助けてっ!!誰か助けてー!!」
末のオオカミは逃げ惑う少年の足がもつれるまで追いかけました。
そして力尽きて転んだところで、その首にガブリと噛みついたのです。
「すごい!獲物を自分で初めて捕まえられたぞ!」
しばらくもがいていた少年がすっかり動かなくなってから、末のオオカミは喜んで声をあげました。
こうして自信を手に入れた末のオオカミは、めきめきと狩りの腕を上げ、三匹の兄オオカミ立ち寄り優れたオオカミになったという事です。
めでたし、めでたし。
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…と、まぁ、勢いだけで書いた創作童話です。
あらゆる物語に登場するオオカミを集めてみた結果こうなりました。
子供向けの絵本って、明らかに理不尽なサラリと一行で描いたきりで逆に怖いですよね…。
創作童話ですがアドリブの方で出してみたい気もしますw